
山あいの宿で過ごす二日間
旅に出ると、つい予定を詰め込んでしまいます。名所を三つ回り、評判の店で食べ、帰りの電車でようやく息をつく。今回はその反対をしてみようと、見本県の山あいにある客室五つだけの宿「みずなら」で、二日間ほとんど何もしないで過ごしました。
一日目 着いたら、まず縁側へ
見本駅から特急で一時間半、そこから宿の送迎の車で二十分。十五時に着くと、女将さんがほうじ茶と干し柿を縁側に運んでくれました。目の前には色づき始めた雑木林と、遠くの山の稜線だけ。テレビは部屋になく、電波も少し弱い場所です。最初の一時間は落ち着きませんでしたが、二時間目にはすっかり縁側の住人になっていました。
夕食は十八時半から、囲炉裏のある食堂で。宿の畑でとれた里芋の煮ころがし、川魚の塩焼き、きのこの炊き込みご飯。品数は多くありませんが、一つ一つの味がはっきりしています。食後は薪ストーブの前で、持ってきた文庫本を一冊読み終えました。
二日目 朝霧と散歩
六時に目が覚めると、谷が朝霧で白く埋まっていました。宿で借りた長靴を履いて、裏山の散歩道を四十分ほど歩きます。道の途中に小さな祠と湧き水があり、宿の方によると、朝ごはんのお茶はこの水で淹れているそうです。
朝食のあとは、チェックアウトの十一時まで、もう一度縁側で過ごしました。何かを見に行かなくても、雲の流れや鳥の声で、時間は案外早く過ぎていきます。
行程と費用の目安
- 宿泊:一泊二食付き 1人18,000円(税込、二人一室の場合)
- 交通:見本駅から特急で約1時間30分(片道4,200円)、駅から宿の送迎あり(要予約)
- 持っていくとよいもの:読みたい本を一冊、羽織るもの、歩きやすい靴
何もしない旅は、思っていたより難しく、思っていたよりずっと満ち足りたものでした。次の連休は、予定を一つだけ減らしてみませんか。
※宿「みずなら」は、この見本のための架空の宿です。