
冬支度の保存食をつくる 祖母の台所から学んだ十の知恵
十一月に入ると、八百屋の店先に大根や白菜、柚子が山のように並びます。値段が下がり、味がのるこの季節は、保存食を仕込むのにいちばんよい時期です。私が保存食を覚えたのは、山あいの町にあった祖母の台所でした。特別な道具はなく、あるのは漬物石と大きな甕、それに季節の野菜だけ。それでも冬じゅう、食卓には何かしらの「仕込んでおいたもの」がありました。
ここでは、祖母から教わった知恵の中から、今の暮らしでも無理なく続けられる十のことを選びました。分量はどれも二〜三人の家族で一冬に使いきれる量です。
仕込む前の知恵
- 野菜は買った日のうちに仕込む。一晩置くだけで水分が抜け、味が落ちます。
- 瓶は煮沸より「熱湯をかけて乾かす」でよい。家庭の量なら十分です。
- 塩は重さで量る。野菜の重さの3%を目安にすると、しょっぱすぎず傷みにくくなります。
仕込みの知恵
- 大根は皮ごと干す。ざるに並べて二〜三日、ベランダで干すと甘みが増します。
- 白菜は四つ割りにして半日干してから漬ける。水が上がるのが早くなります。
- 柚子は皮と果汁を分けて使う。皮は砂糖煮、果汁は冷凍しておくと鍋の季節に重宝します。
- 重しは野菜の重さの倍。二日目に水が上がったら半分に減らします。
保存の知恵
- 瓶には仕込んだ日付を書く。祖母はかまぼこ板に墨で書いて甕の上に置いていました。
- 取り出すときは乾いた箸で。水気が入ると、そこから傷み始めます。
- 食べきれないと思ったら、早めにおすそわけする。保存食は人に配るところまでが仕事、というのが祖母の口ぐせでした。
はじめての方におすすめの組み合わせ
最初の冬は、大根の甘酢漬け(作業30分、冷蔵で2週間)、白菜の塩漬け(作業40分、冷暗所で3週間)、柚子皮の砂糖煮(作業1時間、冷蔵で1か月)の三つから始めてみてください。材料費は合わせて1,500円ほど、土曜日の午後があれば仕込めます。
「たくさん作るより、毎年作ることのほうが大事なんよ」
祖母のこの言葉を、私は毎年の冬支度のたびに思い出します。一つだけでもかまいません。今年の冬、台所に一つ、日付を書いた瓶を置いてみてください。